渡航移植の成績と透析患者の余命|手術の成功率と生存率・移植腎の生着率は何年?
このページでは様々なデータを用いて、それらの疑問を解くと同時に、透析と移植の違いについても触れてみようと思います。
◆このページの情報でご理解いただけること◆(読了時間:約7分) ・腎移植手術の成功率 ・移植された腎臓が機能を保ってくれる期間 ・移植手術後の余命 ・透析と移植の生活の質の違い ・透析患者さんの余命 ・医療通訳とは何か。その重要性について ・保険と医療費控除について |





まずは移植された腎臓の生着率と術後の余命について。
東京女子医大病院の資料による
「生着率」と「生存率」
【移植腎が機能している年数(生着率)】
手術年度 | 術後1年 | 術後5年 | 術後10年 |
1987-1997 | 93.3 % | 82.0 % | 66.6 % |
1998-2000 | 97.8 % | 94.9 % | 82.9 % |
2001-2004 | 99.1 % | 93,2 % | 89.0 % |
2005-2016 | 99.3 % | 95.4 % | 87.9 % |
【移植患者が生存している年数(生存率)】
手術年度 | 術後1年 | 術後5年 | 術後10年 |
1987-1997 | 98.2% | 95.6 % | 93.0 % |
1998-2000 | 100% | 99.3 % | 97.1% |
2001-2004 | 100% | 99.1 % | 97.2 % |
2005-2016 | 99.1 % | 98.0 % | 95.5 % |
上記の数字は生着率と生存率であり、いわゆる外科手術の「成功率」には触れていませんが、1998年以降に手術を受けた患者さんの1年後の生存率は ほぼ100%ですから、外科手術そのものは限りなく100%成功していると読み取れます。
なお1987-1997年の成績は、それ以降に比べると特に生着率がやや低いですが、これは現在の免疫抑制剤の主流となってるタクロリムスなどの優れた薬が世に現れる前の時代だからでしょう。
その免疫抑制剤の進歩の歴史は免疫抑制剤で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
また、この資料では術後10年の結果までしか記されていませんが、兵庫医科大学の発表によると、最初の1年間を順調に経過した場合、移植腎は平均で約18年間機能するとのデータがあり、また、別の統計によると30年以上の長期に渡って生着している患者さんも少なくはないようです。
これらの好成績は免疫抑制剤の進歩のみならず、医療者側が免疫反応についての研究を重ねた賜物であり、優れた免疫抑制剤を、その副作用を抑えながら「上手に」処方できる医学的知見が確立したことも、好成績に大きく寄与しているのです。
ただし、近年のこの優れた生着率と生存率は、専門医の指導に従って免疫抑制剤を適切に服用して、感染症にも注意を払った生活を送った結果であり、薬の飲み忘れや不摂生な生活を続けると、このような成績には結び付かないでしょう。
また心に留め置くべきこととして、腎移植の外科的手法は既に世界中で確立しているため、手術の成功率は限りなく100%に近づいているとはいうものの、たとえ盲腸や皮膚の腫れ物の切開術のような、比較的簡単な手術であっても、安全が100%保証された外科手術は、世界中どこにも存在していないことは理解しておくべきです。
我が国や、症例数が極めて豊富な医療先進国である米国で腎移植手術をお受けになったとしても、完全にリスクがゼロであるとは言い切れませんし、医師も「100%安全を保証する」とは、言いたくても言えません。成功率が100%ならば、手術前に「手術同意書」へのサインを患者に求める必要はないのです。
ですから、信頼できる症例豊富な移植外科チームに手術を委ねましょう。
人工透析生活と腎移植後の生活の質の違い
以下の表のように、透析生活と移植後の生活の質 (QOL) の差は歴然としたものがあります。人工透析(血液透析)生活 | 腎移植後の生活 | |
通院回数 | 週3回 一回4~5時間 | 1月~2月に一回 |
食事制限 | あり(塩分・タンパク質・カリウム等) | ほぼ制限なし |
水分制限 | 厳しい制限あり | なし。むしろ多く飲むことが推奨 |
時間的な拘束 | あり | なし |
精神的な苦痛 | あり | なし |
旅行や移動 | あり(旅行先でも透析が必要) | 自由 |
スポーツ | 自由 | 下腹部に気をつければ自由 |
入浴 | 透析当日はシャワーが推奨 | 自由 |
倦怠感/疲労感 | 透析終了後は特にあり | なし |
身体の痒み | あり | なし |
口臭 | 特有の口臭あり | 腎臓病に起因する口臭はなし |
感染症への注意 | 必要 | 重要 |
既に透析生活を送っておられる患者さんからは、いまさら何をとお叱りを受けるでしょうが、まだ透析療法に入っていない患者さまは、上記の透析と移植後の生活の質の違いを参考になさって、透析前に受ける先行的腎移植をお考えになられてはいかがでしょうか。
透析患者さんの余命|糖尿病が原疾患だと5年生存率は50%ほど
都内の透析クリニックのウェブサイトによりますと、2020年の時点で我が国の国民全体の平均余命は60歳男性で24.21年、同じく60歳女性で29.46年とのこと。一方で透析患者さんの平均余命は60歳男性が12.3年、同様に60歳女性で14.3年であると公表されています。この透析患者さんの余命は透析技術の進歩も手伝い、2003年に比べると男性で約2.5年、女性で約2.9年ほど伸びてはいるようですが、悲しむべきことに相変わらず国民全体の平均余命の半分以下というのが厳しい現実のようです。
しかも糖尿病を原疾患とする腎不全に陥り、結果としてて透析生活に入った患者さんの余命は、透析患者全体の余命よりはるかに短く、医療機関により大きな差はあるものの5年生存率は全国平均で50%程度しかないという、極めて強い危機感を感じざるを得ないデータも存在します。
つまり、国内で日本臓器移植ネットワークの献腎移植プログラムに登録しても、腎臓移植の平均待機期間は15年-17年と言われていますから、仮に60歳で透析生活に入った患者さんが、透析開始後ただちに臓器移植ネットワークの死体腎プログラムに登録を済ませたとしても、計算上は移植の順番が廻って来る前に天寿の方が先に訪れてしまうことを意味しています。当然のこととして、糖尿病が原疾患で透析に移行した患者さんの場合は、なおさら時間が足りないのが現実です。
海外渡航腎移植を受けることをお考えでしたら 当会について をご覧ください。
また以下の関連ページも、透析との決別を図るうえで参考にしていただけるはずですから、ご一読くだされば幸です。
・透析の問題点
・透析前の先行的腎移植
・海外腎移植実現までの流れ
・海外医療機関の受入状況
・海外腎移植のこぼれ話
・海外腎移植|患者様の体験記




【医療通訳とは】
医療通訳とは、医療の専門用語に精通し、医師や看護師とのコミュニケーションを円滑に図って、正確な情報を患者さまに提供し、また、患者さまの状態を医療従事者に正確に伝える、医療現場で働く通訳のプロフェッショナルのことを指します。難解な医療の専門用語を完全に理解し、患者さまと医療従事者との意思疎通を正確に図るには、何よりも豊富な経験を積むことが重要です。
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