海外での腎臓移植(腎移植) ー 透析前の先行的腎移植とは




このページでは、近い将来、透析生活に移行不可避と診断された透析前の患者様へ、透析治療の実際と、透析業界の内情および先行的腎移植を含め、海外での腎臓移植(腎移植)事情についての情報をお伝えしようと思います。
特に血液透析(人工透析)であれ腹膜透析であれ、間もなく透析生活を迎える、透析前の段階の患者さまのお役に立てれば幸です。
また、腎移植を受けることについて、日本の透析関連医はどのような本心で患者を診察しているか、さらに、透析前に受ける先行的腎移植によって辛い透析生活から抜け出すと、お身体にどのような驚くべき変化が起こるかをお知らせしたいと思います。
我が国には現在、およそ33万人の透析患者さん(血液透析・腹膜透析を合わせた数)がいて、その数は毎年およそ5千人のペースで増加を続けています。これは実に国民の420人に1人という多さ。その多くが、糖尿病や高血圧の合併症から透析を必要としています。
海外、特にアメリカは、日本の約2.5倍の人口がいるにもかかわらず、透析患者数は人口約750人に1人の割合です。
つまり日本の透析患者数は米国のおよそ1.8倍。
一方で腎移植の実績はというと、日本の腎臓移植(腎移植)実施数は年間およそ1600件ほどですが、米国はその10倍以上の17000件にも上ります。海外では「透析療法は腎移植までの繋ぎの医療」と考えられていることが良く分かります。
透析患者数が日本の1.8倍もあるにもかかわらず、何故これほどの移植手術数に差が生じているかというと、米国では年間およそ7000件の死体からの臓器提供があることに加え、驚くべきことに、米国を含む複数の国々では、親族以外の利他的なドナーによる生体腎提供が認められていて、その数は近年、顕著に増えているという報告があります。
そして、この親族以外からの生体腎提供を拡大していくため、ドナーに旅費を支給したり、臓器提供に伴う働けない期間の収入を補填する制度まで整備されているというから、海外と我が国とは大違いですね。
さて、不幸にも腎機能が悪化し、クレアチニンの値が上昇を続け、将来への大きな不安をお持ちの患者様も多いことでしょう。
あるいは、既に Blood Access Fistula (日本では「シャント」と呼ばれています)を腕に造設し、透析開始が秒読みという段階まで進んでいる方もおいででしょう。
個人差はあるものの、一般にはクレアチニンの値が5.0を超えると、透析に備えて腕にシャントを造るよう医師から指示を受け、クレアチニン値がおよそ8.0を超えると、透析生活に突入することが多いようです。
このような透析開始の秒読み段階に入る前に、医師からは、
・腎不全は不可逆的な疾患のため、悪化することはあれ、機能回復することはない。
・透析療法が必要となるまでの保全期間の長短は、患者の努力次第であるが、いずれ最終的には、血液透析または腹膜透析が必要となる。どちらの道を選ぶか透析前のいま、そろそろ考える時期である。
・透析以外の選択肢としては腎移植(腎臓移植)があるが、患者に適合する血縁関係のあるドナーが必要だ。
・もし血縁ドナーがいない場合は、献腎移植(死体からの提供による移植)を受ける道があるが、それには日本臓器移植ネットワークに登録する必要があり、現在の待機期間は、17年ほどである。
おおむね、上記のような説明を受けることになるはずです。
とりわけ、糖尿病や高血圧を放置してきたり、腎機能の悪化を軽んじて考えていた患者さんには、目の前が真っ暗になるほどの宣告でしょう。
(写真の下に続く)




上の写真は、透析クリニックの一景。
ひとたび透析生活に入ると、月・水・金または、火・木・土の一日おきに週に3日、このように透析針を腕に刺し、約4時間もの間、機械に繋がれるのです。往復の通院に要する時間を加えると、少なくとも半日は費やさざるを得ません。時間と行動の自由が奪われ、かつ心臓に特に大きな負担を強いられるのが人工透析療法。透析前の生活は一変してしまいます。
その透析クリニックの休診日は、祝祭日や年末・年始は無関係に、日曜日のみ。つまり、大晦日だろうが元日であろうが、自分の透析日には通院しなければなりません。
一年の締めくくりである大晦日や、厳かな気分で迎える新たな年の第一日目である元日にも、半日以上をかけて辛い人口透析を受けることを余儀なくされている、末期腎不全患者さんの心境を察すると誠に心が痛むとともに、透析を必要とする患者のために、年末・年始も通常どおりのケアにあたられている医療従事者の皆さまには頭が下がります。
海外では日本のように、年末・年始も関係なく透析治療を行う医療機関は、よほど大きな病院以外はないでしょう。
ところで、血液透析では時間が奪われるだけではありません。食生活においては、カリウムやリンを多く含む生野菜や果物は口にすることが出来ず、塩分と水分の摂取にも常に非常に厳しい制約が課されます。
「カリウム」は、体内の余分な塩分を排出して、血圧の上昇を抑える重要なミネラル分ですが、このカリウムを含む野菜は、ほんの一部の種類を除き、いったん茹でて、その重要なミネラルであるカリウムを除去しないと口には出来ません。わかめや納豆・牛乳、それに肉や魚なども「要注意食品」に入ります。そして最もカリウムを多く含むバナナ、ミカンやメロンなど、季節ごとの美味しい果物は、原則として口にはできなくなります。
腎機能が悪化した患者さんは、カリウムの排泄量が減少することにより(排泄されずに体内にカリウムが残ることにより)「高カリウム血症」に陥る結果、この食事コントロールを上手に行わないと、不整脈や心停止を引き起こすほど危険な状態を招いてしまいますから、毎日の厳格な食事制限は欠かすことができません。
また、制限は食事だけではありません。水分の摂取にも厳格な自己節制が求められます。
透析療法に入ると、わずかに残っていた自己腎の機能が急速に失われるため、お小水(尿)が作られなくなります。
この結果、本来は尿や汗として体外に排出されるべき毒素や水分が排出されずに体内に残り続けるため、このままでは尿毒症を引き起こしてしまい生命維持ができません。
このため、体内の老廃物や毒素、また余分な水分を「人工透析」または「腹膜透析」により人工的に除去するのですが、水分制限をしないと、透析中は実に辛い状態に追い込まれます。
ほぼ全ての人工透析患者さんは、例外なく一日おきに透析を受けておられます。その際、尿が出ないために増加した体重(一般的には3Kg〜4Kg)を、わずか4時間で除水しています。つまり透析当日の朝、例えば60Kgであった体重が、4時間後には56〜57Kgにまで減るのです。透析装置のポンプにより体内から血液を装置内に吸い出し、ダイアライザーと呼ばれるフィルターを通してろ過し、そのろ過された血液を再び体内に戻すのですが、悲鳴を上げるのは心臓。
除水する量が多ければ多いほど透析中の心臓に負担がかかり、心拍数は急上昇。このため急激に血圧が低下し、ふくらはぎが「こむら返り」を起こしたり、吐いたりする患者さんも珍しくはありません。
では除水量を減らせば良いのではと考えますが、透析患者さんは、それぞれの体格によりドライウエイト(DW)=透析終了後の目標体重が定められており、このDWを大きく超えてしまうと、肺の中に水が溜まることとなり、やはり危険な状態となります。
このように、透析による除水量をなるべく減らすため、水やお茶、スープや味噌汁といった水分全般の摂取を控えなければならず、特に暑い時期には「地獄の節制」と表現する患者さんも少なくありません。
水分についてさらに言えば、透析患者さんは体内のナトリウム(Na)や尿素窒素(BUN)の値が高いため、健常人よりもはるかに喉が渇いて水(特に冷たい水)を欲しますから、この水分制限は日常生活を送る上で、非常に辛いものがあります。健常人よりも喉が渇いて水分を欲するにもかかわらず。
大変にお気の毒ながら、「熱中症予防のため、こまめな水分と塩分の補給を」と求められるも、従いたくても従えない状況下にあるのが透析患者さんです。
これらの厳しい食事と水分の制約に加え、毎日多くの薬を飲み続けても、過酷な透析地獄から抜け出すことは残念ながら決して出来ないのです。なぜならば、透析療法は腎不全の根本治療ではなく、単なる延命策でしかないから。
(ただし、誰でも自己負担ほぼゼロで一生涯、透析を受けることが出来るユートピアのような日本の健康保険制度は、間違いなく世界に誇れる貴重な制度と言えます)
そこで、この困難でありながら、決して腎不全を治してはくれない透析生活を回避するため透析前に、「国内で移植が受けられないのであれば海外で」と考え、このことを医師に相談すると、
・なぜ移植などという、大それたことを考えるのか。透析に入れば10年は生きられる
・透析前に海外での腎移植など、もってのほか。イチかバチかの危ない橋は渡るな
・海外に渡航しての移植は、倫理的に大きな問題がある
・したがって海外から帰国後に予後を管理してくれる病院はない ←*この移植反対派の医師の説明は誤りです。
現役の泌尿器科医による解説【渡航移植後の患者の診療実態】をご覧ください。
・免疫抑制剤は保険適用ではないので、高額な自己負担が毎月生じる
*この発言も誤りで、移植後は「厚生医療」が適用されるため、たとえ高額所得者であっても、毎月の自己負担額の上限は2万円ほどです。(自治体により、若干の開きあり)
・だから海外での移植など考えるな。おとなしく透析生活に入るのが、最も自然で安全だ
このような否定的見解しか聞くことが出来ないのが、現在の日本の実情ではないでしょうか。
透析導入後の5年生存率は60.3%(2006年のデータ)また、10年生存率は36.2%(2001年のデータ)と発表されているにもかかわらず。
賢明な患者さんは、ここで立ち止まって、海外の実情を含め、確かな情報を収集して熟考しなければなりません。
なぜなら、透析生活に入る前の患者さんは、日本の透析医療の実情について、余りに無知だからです。
正しい情報を持ち合わせない患者さんのなかには、「自力によって海外で腎移植を受けると言えば、医師は応援してくれる」と、とんでもない大きな勘違いをしている方までいるほど。
ごく一部の例外はあるものの(相談先が移植外科医だったり、個人的に極めて親しい医師などを除き)、透析クリニックや、系列に透析部門を持つ医療機関は、透析開始秒読み段階の患者を手放すわけがありません。
誤解を恐れずに言えば、透析患者は、一日おきに一生涯通って来てくれる極めて大切な固定客であり、これ以上ない安定した収入源である「金の成る木」だからに他なりません。移植医療が進むことに最も危機感を抱いているのは、実は透析業界。現状では大都市の透析病院よりも、地方都市の病院やクリニックのほうが、国内であれ海外であれ、患者が移植の道を選ぶことを恐れ、嫌うようです。
透析業界の実情(参考サイト)
毎月のように悪化するクレアチニンやヘマトの数字を見て、悲嘆に暮れる患者さんの心中を推し量ることなく、「早く透析に入るべきだ」と勧めるクリニックが多いように聞きます。しかし透析業界の内情は、知れば知るほど恐ろしいものがあり、正に伏魔殿。「透析大国ニッポン」といわれる由縁が、ここにあります。
巨大な透析マーケットの利害関係下で働く、透析医の指示に盲目的に従い、透析生活に足を踏み入れますか?
それとも、ご自身で正確な情報を掴んで、極めて辛く制約が多い透析生活を味わうことなく、健康な体を再び取り戻しますか?
海外においては、ご自身の「人生観」・「死生観」・「宗教観」「世界観」などに突き動かされ、困難な闘病生活を余儀なくされている見ず知らずの患者に、自らの臓器を提供して腎移植のチャンスを与えて健康を回復させるという、人間愛に溢れる崇高な意思を持つ利他的な臓器提供者が増加しているということは事実のようで、トップページでも触れましたが、実際に米国を含む複数の国では、親族以外からの生体移植が広がっているという記事が、2023年に有力紙で報じられています。
このような情報は「移植難民」とも揶揄されている、透析前に海外で先行的腎移植手術を希望する日本の患者さんへの福音となるのではないでしょうか。
さて、話を「先行的腎移植」に戻します。
透析前に受ける腎臓移植(腎移植)は、「先行的腎移植」と呼ばれ、ドナーさえ確保できれば、近年ではわが国でも積極的に推進している医療行為です。(海外とは違い、日本で先行的腎移植を受けるには、事実上、ドナーは親族に限定されます)
そして着目すべき点として、透析開始前に受ける腎移植と、透析開始後に受けるそれでは、術後の回復に大きな差があるということが医学的に証明されたことが挙げられます。
透析前の患者さんは、まだ通常にお小水が出ているため、膀胱や尿管に弾力性があり、術後に大量の水分を摂取しても(術後において最も重要なことの一つとして、一日に2〜3リットルの水分を摂取することがあります)何の問題もなく排尿が行えますが、いったん透析生活に入ると、早い方で数ヶ月、長くても2年ほどで、お小水がまったく出なくなります(腎機能の完全廃絶)。
この状態で移植手術を受けると、移植された新たな健康な腎臓は活発に働いて、多くの尿を作り出す結果、一気に大量の尿が膀胱に流れ込みます。
すると、長年にわたり尿を蓄えることのなかった、弾力性を失っている膀胱は容易に広がってはくれず、術直後などは、わずか数十ccの尿しか貯めることが出来ません。したがって移植手術後の数週間という期間は、10分おき、あるいは15分おき程に排尿せざるを得ず、それこそトイレに大忙しという状況を招くこともあります。
(膀胱の蓄尿可能量が自然増加し、健常人と同様の排尿ペースを取り戻すことが出来るまでには、数週間から一月ほどを要するでしょう)
また、透析生活に入ると、膀胱のみならず尿管も弾力性を失うため、新たな腎臓に血管を縫合する際に出血を伴いやすくなり、術後4〜5日間は血尿が見られるのが通常ですが、透析前に行う先行的移植手術においては通常、血尿は見られないか、見られたとしても1−2日で消失します。
以上はあくまで一例に過ぎませんが、このように、透析開始前に受ける腎移植は、透析開始後に受けるそれと比べ、あらゆる点で明らかに有利であることは論を待ちません。
外部の参考サイト(先行的腎移植)
話が少しそれますが、腎臓移植に限らず、臓器移植をお受けになるには、意外なことに歯の健康がとても大切です。
理由は、移植手術後に服用する免疫抑制剤にあります。
虫歯や歯周病があると、免疫抑制剤の作用により症状が悪化する可能性があり、その結果として雑菌が繁殖して全身状態が悪化することがあります。
海外の移植外科医のなかには、歯科医のクリアランス(同意)を得ないと、手術に向けた最終のゴーサインを出さないことすらあり、かつ腎移植術前に行われる様々な事前検査のなかには、歯の状態のチェックとクリーニングが含まれているのが一般的です。
虫歯や歯周病は短期間では治りませんから、海外で腎移植を検討されている患者さんは、日ごろから歯や歯茎の衛生状態に気を配るべきでしょう。
また、海外腎移植のこぼれ話でも述べましたが、普段の運動もとても大切です。いままでに多くの患者さまが海外の医療機関から退院した様子を見てきた経験から言えることとして、日々、適度な運動を継続して行っていた患者さまは皆さま、しっかりとした足取りで退院されました。
散歩でもゴルフでもいいのです。歩くことにより、下半身の筋肉は自然に鍛えられます。屈伸運動が加えられれば、より効果的なようです。
海外で行われる腎移植の平均入院日数は、術前・術後を含めて一週間ほど。しかし、わずか1週間とはいえ、ほぼベッドで横になっている状態が継続すると、自分でも驚くほど筋力が低下します。
このため年齢にもよりますが、普段から運動をする習慣がない患者さまの一部は、車椅子を使っての退院を余儀なくされましたが、散歩であれゴルフであれ、適度な運動を継続して行っていたほとんど全ての患者さまは、自ら元気に歩いて海外の病院を後にされました。
これから腎移植などの外科手術をお受けになる方は、無理のない範囲で毎日の運動、特に下半身の運動をすることを心がけられたら良いでしょう。その努力は、退院時に必ず実感できるはずです。
食事や水分制限のない、自由で健康な体を取り戻すには、患者さんの情報収集能力が大きな鍵となってきます。
目を覆いたくなるような、我が国特有の透析業界の実情と思惑に左右されず、広く海外にも目を向けて、ご自分の大切な将来を、ご自身で真剣にお考えになられてはいかがでしょう。
正しい情報さえあれば、毎月の血液検査に表れるクレアチニンの値を心配し続ける生活には、ピリオドを打てるのではありませんか?その正しい情報を基に、透析前に海外で先行的腎移植をお受けになることを考えてみませんか。
ご参考までに、これまでに海外で腎臓移植を受けられた患者さまの体験手記や、海外腎移植のこぼれ話も併せてご覧ください。
私ども海腎協は2021年以降、日本人患者さまに腎移植手術を施してくれる海外の医療機関と患者さまを結び付け、腎移植の勧誘や仲介、また、あっせんや調整といった活動をすることは行っておりませんので、外国人患者に腎移植手術を施してくれる医療機関等の一般情報はお伝えできても、具体的なコーディネーションをすることはしておりませんが、これから海外にて先行的腎移植を含む腎移植手術をお受けになることをお考えの方々には、過去の経験に基づいた的確なアドバイスを差し上げられると確信しております。
私ども海腎協では海外の医療情報提供のみならず、渡航先での通訳や、現地で調理する和食を中心とした毎日の食事の差し入れ、さらには買い物や衣類の洗濯といった、海外渡航治療に不可欠である様々な役務サービスを提供をしておりますので、ご相談やご質問等がおありでしたら、当会までなんなりとお気軽にお問合せください。
保険・医療費控除について
生命保険や医療費控除の活用方法に関する情報をお知らせいたします。
現時点で有効な生命保険または医療保険にご加入の場合、外国での治療であっても、現地医師団作成の診断書を添付することにより、手術給付金および入院給付金の請求を行うことが可能ですから、詳しくは各保険会社にお問い合わせください。せっかく加入している保険です。有効にご活用ください。
また同様に、現地医師団の医療費領収書を添付することにより、200万円を上限とした所得税の医療費控除が受けられます。ただし国外での治療のため、高額療養費などの医療費そのものの還付を受けることは出来ません。
詳しくは、税理士または市区町村の税務課までお問い合わせください。
保険や税の控除を上手に利用しましょう。