腎機能を表すクレアチニンとeGFRとは
腎不全でお悩みの患者さんにとって、血液検査で分かるクレアチニンの値は日々の心配事であると思います。クレアチニンとは、クレアチンリン酸という筋肉に関連する物質が代謝されたあとに残る老廃物で、通常この物質は、腎臓でろ過されたのちに尿となって体外に排出されます。しかし血液中に残るクレアチニンの値が高いということは、腎臓のろ過機能(フィルター機能)が衰えていることを示唆します。
ただしクレアチニンの値は、腎機能そのものを直接的に計測しているわけではありませんから、正確な理解が必要です。
腎機能とクレアチニンの値は密接に関係しているものの、クレアチニン値は腎機能を「推算」しているに過ぎないのです。
また、血清クレアチニンの値(血液中のクレアチニン量)は、筋肉量に大きな影響を受けますから、スポーツ選手などのアスリートのそれは、一般の人々より高い傾向にありますし、一般人でも、激しい運動の直後に血液検査を受けると、クレアチニンの濃度は普段よりも高い値を示すのが通常です。
また厄介なことに、血清クレアチニンが高い値を示すのは、腎機能が50%ほどにまで低下してからのため、いまは正常範囲を示していても、それだけをもって「腎機能は正常だ」と判断してしまうのは早計です。腎機能が50%程度にまで低下して、はじめて血清クレアチニンの上昇が検査により判明するからです。
言い換えれば、腎機能が80%から60%ほどに下がった軽度の腎不全の状態であっても、血清クレアチニン量は正常値を示すということですから、注意が必要でしょう。
では、どうしたら現在の腎機能を正確に測定することができるのでしょう。
最も正確に知る方法としては Nuclear Medicine (核医学)を用いて計測する方法があります。
「腎動態シンチグラム」と呼ばれる検査で、これは放射性物質(アイソトープ)を体内に取り入れ、その流れを体外からカメラで撮影することにより、直接的かつ正確に腎機能を測ることが出来ます。もちろん左右の腎臓が、それぞれどの程度の機能を残しているかも知ることが可能。
しかし、この「腎動態シンチグラム検査」は、放射線を用いて行われる検査のため、特殊な装置や大掛かりな設備が必要であり、かつ熟練した検査技師によって行われなければなりません。加えて検査に要する時間が1.5 〜2時間ほどかかりますから、気軽に受けられる検査とは言えないでしょう。
次に、「クレアチニン・クリアランス検査」も、腎機能をほぼ正確に測定することが出来ます。
これは、一定時間内に排泄された尿の中に、クレアチニンがどの程度存在しているかを実際に測定し、血液中のクレアチニン量と比較することにより、腎臓のろ過機能(糸球体機能)を知ることが出来ます。尿中のクレアチニン量が少ないのに、血清クレアチニン量が多いということは、腎臓の糸球体ろ過機能が衰えている証左です。
この検査のデメリットとしては、24時間の蓄尿が求められることでしょうか。
自宅で24時間かけて溜めおいた尿(蓄尿)を、医療機関に持ち込んでの検査となります。
医療機関からは蓄尿のための専用の容器を貸してもらえますが、公共交通機関でそれを運ぶのは、簡単ではないかも知れません。
そこで現在では、上記の腎動態シンチグラム検査やクレアチニン・クリアランス検査に代えて、「e-GFR検査」により腎機能を測定する方法が一般化されています。
このeGFR検査は、上記の2種類の検査方法より、やや正確性に欠けるものの、比較的簡単に腎機能を調べることが可能です。
必要なものは、血清クレアチニン値(通常の血液検査により判明するクレアチンの値)と年齢、それに性別です。これらの情報を計算式に入力することにより、現在の腎機能が G1(正常:GFR≧90)から、G5(末期腎不全:15>GFR)の6段階の、どこにあるのかを知ることが出来ます。
調べ方は「eGFR」で検索すると、多くの医療機関が提供する計算フォームを見ることが出来るので、まだ eGFR の値を把握されていない患者さんは、ぜひ一度お調べください。
このeGFRの値を調べることは、上記のように簡単ではありますが、これも腎機能を直接的に測るものではなく、あくまで「推算」による結果です。したがって筋肉量が多い人、身長が高い人、体の表面性が大きい(体格の良い人)などは、結果に満足することなく、医師のアドバイスを求めるべきでしょう。
不幸にもクレアチニンが上昇を続け、腎機能の悪化が明らかになってしまったら、近い将来は、ご自身の腎臓の機能を代わりに果たしてくれる人工透析または腹膜透析療法を開始して生命維持を図るほかありません。何故ならば、いったん低下した腎機能は現代の医学をもってしても、決して回復することがないからです。食事療法や運動制限を継続しても、いつか必ず末期腎不全に陥り、何らかの対策を講じない限り、最後は尿毒症により死に至ります。
腎不全にかかると、腎臓内部の糸球体が老廃物を除去できなくなり、血液から尿を作り出すことも出来なくなります。さらに、機能が低下した腎臓は、血圧を調整する「レニン」というホルモンを防御的に作り出してしまう結果、血圧が上昇してしまいます。
また、赤血球を作る「エリスロポエチン」というホルモンが腎臓内で生成されにくくなるため、少し歩いただけで息が上がるなど、貧血の症状も示します。
透析患者さんが透析終了後に高価な薬剤「エリスロポエチン」(通称エポ)を、注射にて体内に摂取しているのは、これが理由なのです。
いったん悪化した腎機能は、残念ながら決して元には戻りません。
時間の長短はあるにせよ、いずれは透析生活が待っています。
その透析の問題点については、こちらをご覧ください。
私どもは2021年以降、日本人患者さまに移植手術を施してくれる海外の医療機関と患者さまを結び付け、臓器移植の勧誘や仲介、また、あっせんや調整といった活動をすることは行っておりませんので、一般情報はお伝えできても、具体的なコーディネーションをすることはしておりませんが、これから海外にて腎移植をお受けになることをお考えの方々には、過去の経験に基づいた的確なアドバイスを差し上げられると確信しております。
当会では海外の医療情報提供のみならず、渡航先での通訳や、現地で調理する和食を中心とした毎日の食事の差し入れ、さらには買い物や衣類の洗濯といった、患者さまが渡航先で安心して快適に過ごせるように、さまざまな役務サービスを提供しておりますので、ご相談やご質問等がおありでしたら、下記までなんなりとお気軽にお問合せください。
なお、透析開始前に受ける「先行的腎移植」については、こちらをご覧ください。
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