海外腎移植手術の写真つきドキュメント
高血圧性腎不全を患われたため、以前に海外で移植手術をお受けになった患者さまの例を一例として、実際の移植手術を豊富な写真とともにドキュメント形式でご案内いたします。なお掲載している写真は、患者さまと医師団および病院の許可を得て当会にて撮影したものです。無断複製および転載は厳にご遠慮ください。
移植手術5日前
患者様は私共の職員と一緒に成田から空路現地入りし、ホテルにチェックイン。ホテルの客室に病院のラボラトリーから職員が派遣され、クロスマッチ検査のための血液が採取される。
組織適合検査の段階で判明した患者様のHLAに合致したドナーの血液と、患者様の血液を実際に混ぜ、移植を妨げる拒否反応が起こらないことを確認するためだ。
移植手術4日前
病院に入院。病室は、別名「臓器移植フロアー」とも呼ばれる、移植患者様専用フロアーにある個室。この病院では、多いときには週に14例、通常でも週に7例ほどの腎移植手術が日常的に行われていて、病棟のスタッフは、臓器移植に関する専門教育を受けたスペシャルナースにより構成されている。
透析は透析室にて実施するが、透析室と移植フロアー間の連携が実に有機的になされている。
移植手術2日前
移植外科チームのほか、腎内科医・心臓専門医・麻酔医・ラジオロジストなど、多くの医師たちが早朝・夜間を問わず病室を訪れ、それぞれの専門的視点から多くの質問が投げかけられる。同時にこの日から免疫抑制剤の投与が開始された。
免疫抑制剤は、日本の藤沢薬品工業(現:アステラス製薬)が開発した最新の薬である、タクロリムス(商品名:プログラフ)を軸に、セルセプト・プレドニンなどを補助薬として使用。今日からは患者様のみならず、私共や看護婦もマスクを着用。
移植手術前日
最後の透析を受ける。もう二度と使うことがないであろうシャントから2本の針が抜かれると、スタッフから拍手が沸き起こった。写真1 写真2
移植手術当日
早朝6時から予備の麻酔が筋肉注射により施される。7時、ストレッチャーに乗せられ、手術室に向かう。
手術室では麻酔医による慎重な処置が行われたあと、腹部が広範囲に消毒される。
様々なモニタリング機器が取り付けられ、準備が整うと、移植外科チームのリーダーにより開腹術が開始された。
患者さん側の手術を担当する移植外科医は4人。他に2人の麻酔医と数人の助手により、手馴れた手つきで新しい腎臓を迎える準備が順調に進む。(手術中の模様のため、一部の写真は閲覧に注意が必要です)
写真 3 写真 4 写真 5 写真 6 写真 7
4人の移植医の8本の手が、まるで自らの意思を持っているかのように目まぐるしく動き、移植手術が進む。摘出から移植まで、わずか19分であった。(手術中の模様のため、一部の写真は閲覧に注意が必要です)
写真 10 写真 11 写真 12 写真13 写真 14
新しい腎臓に血管が繋がれた瞬間、即座に利尿が認められた。(手術中の模様のため、閲覧には注意が必要です)
写真 15
移植手術終了時刻:午前10時50分。開腹から縫合まで、約2時間50分。麻酔から覚醒した時刻:午後0時15分。
麻酔医が決定したドースが適切であったため、今回の患者さんの覚醒は非常に早く、理想的な麻酔処置であったと思われる。
移植手術翌日
クレアチニンが 2.8 に下がった。尿にはまだ少し血液が混じっている。写真 16
移植手術後2日目
クレアチニンは 1.7。尿に血液は見られない。ペニスに挿入されているカテーテルの違和感を患者さんが訴える。点滴以外に水を一日最低2,000cc飲むのが苦痛。顔や首に赤みが戻った。移植手術後3日目
クレアチニンは1.1。患部の痛みがほとんど消えた。手の爪がピンク色に変わっていることに驚き。足の裏の皮膚にも赤みが差し、綺麗になってきた。血圧も 120/80 と、理想的な値に下がった。全身の痒みも感じない。腎移植により改善されることは、単に利尿だけではないことを実感。問題としては、お腹に溜まったガスを出すのに苦労した。
写真 17
移植手術後5日目
カテーテルと点滴が外された。自力でトイレに歩き、11年ぶりの放尿に涙。忘れていた感覚が蘇えってきた。1時間毎に250ccの水分摂取がきつい。長年にわたり膀胱を使うことがなかったので、15分おきにトイレに向かうが、一回の排尿量は、50~70cc 程しかない。後に容量が増加することを願う。
クレアチニンは 0.7。
写真 19 写真 20 写真 21
移植手術後8日目
めでたく退院。自力歩行で車に乗りホテルへ。写真 22 写真 23
この患者さまは透析時代からほぼ毎日、ご自宅近くを2時間ほどかけて、やや速足で散歩をされていたとのこと。
このため下半身の筋肉が衰えることなく、このようにしっかりとした足取りで退院されました。
入院期間は術前・術後を含め、6-8日が標準的な日数ですが、わずか1週間とはいえ、ほぼベッドの上で過ごすことにより驚くほど下半身の筋力が衰えますから、普段の適度な運動は外科手術を受けるにあたっては、とても大切なことと感じます。
散歩のみならず、普段からゴルフなどで運動をする機会がある患者さまの多くは、車椅子を使うことなく、自ら歩いて退院されたことをよく記憶しています。
このあと帰国までに、膀胱の容量が100cc程度まで広がった。
念のため紙オムツを手に帰国の途についた。
最終的に、クレアチニン 0.7 で帰国。現在は2か月に一度、専門医の診察を受けておられ、体調はすこぶる安定しているとの報告を受けている
このように腎移植は、もはや実験的医療ではなく、あらゆる医療行為に存在する一定のリスクはあるとはいえ、すでに知識・技術ともに確立された医療行為と言えるでしょう。
この患者さまの入院中も、病院にはヨーロッパやアラブ諸国から多くの患者さんが訪れ、毎日のように移植手術が行われ、また毎日のように退院していきました。
国内でドナーに恵まれなくても、辛く不自由な透析生活から抜け出すチャンスが実際にあるのです。
透析からの離脱を真剣にお考えの患者さまは、ぜひ参考になさってください。
ご相談やご質問等がおありでしたら、下記までお気軽にお問合せください。
保険・医療費控除について
生命保険や医療費控除の活用方法に関する情報をお知らせいたします。
現時点で有効な生命保険または医療保険にご加入の場合、外国での治療であっても、現地医師団作成の診断書を添付することにより、手術給付金および入院給付金の請求を行うことが可能ですから、詳しくは各保険会社にお問い合わせください。せっかく加入している保険です。有効にご活用ください。
また同様に、現地医師団の医療費領収書を添付することにより、200万円を上限とした所得税の医療費控除が受けられます。ただし国外での治療のため、高額療養費などの医療費そのものの還付を受けることは出来ません。
詳しくは、税理士または市区町村の税務課までお問い合わせください。
保険や税の控除を上手に利用しましょう。