腎移植(腎臓移植)手術前クロスマッチ検査とは
このページは、ご自身で臓器移植への道を切り開き、再び健康な体を取り戻すために人生を前向きに歩いておられる患者さまの一助になることを願って作成されたページです。
◆このページの情報でご理解いただけること◆(読了時間:約4分) ・それは臓器移植手術直前に行われる最終検査 ・検査結果「陽性」が意味することとは ・超急性拒絶反応を防ぐためには |
骨髄移植を含め、あらゆる臓器移植医療は、拒絶反応との闘いの歴史でもあります。
国内では、1956年に初めて腎移植が行われましたが、当時は提供された臓器が患者の体内で引き起こす免疫反応に対する医学的知識が現在ほどは解明されておらず、いわゆる実験的医療ともいえる時代でした。
その後、免疫学の研究が急速に進歩を遂げ、その研究成果を基にした、多くの優れた免疫抑制剤が国内外の製薬会社により製剤化され、現在に至っています。
特に旧藤沢薬品工業(現:アステラス製薬)が1980年代に開発に成功し、1990年代になって我が国の移植医療現場でも使われ始めた経口薬「タクロリムス」 開発コードネームFK506(商品名:プログラフ)は、それ以前のシクロスポリン製剤に比べて、極めて有意かつ安全に免疫抑制作用を発揮したため、移植医療の現場を根本から変化させたとも言われる薬剤となりました。
さらに、経口薬以外にも、移植直後の超急性拒絶反応をほぼ完全に抑制する、「シムレクト」や「ATG」といった、手術時にのみ点滴投与される薬剤との併用により、いまでは安心して臓器移植を受けることが可能となってきました。
免疫抑制剤の歴史と種類のご説明。
しかしながら、これらの優れた免疫抑制剤も、患者とドナーの組織的相性によっては、その効果を発揮することが出来ません。
そこで、提供される臓器が患者にとって不都合なものでないことを確認する検査が、移植前には必ず行われます。この検査を「クロスマッチ検査」あるいは「リンパ球交差試験」と呼び、たいへんに重要な移植前の検査となります。
きわめて大雑把に説明するとこの試験は、患者とドナーの血液を非常に敏感な試薬とともに実際に混ぜ合わせて反応を観察し、その結果が「陰性」であれば移植へのゴーサインが、また「陽性」であれば、いくら優れた免疫抑制剤を使用しても、術直後に超急性拒絶反応が発現することが明らかなため、手術にはストップのサインが出されます。
(実際には単純に「陰性」「陽性」の白か黒かではなく、%(量)で示され、一定の%以下であれば「陰性」、また一定の%以上であれば「陽性」と判定)
現在は極めて高感度な機器や試薬を用いて検査が行われていますから、リスクの有無が事前に正確に判明します。
つまりこの検査は、患者の体内に植えられる他人の臓器(異物)が、患者と仲良くなれるか、なれないかを事前に見極める、手術前の最終検査です。
このクロスマッチ検査によって陽性反応が出現する度合いが高いケースとしては、過去に大量の輸血を受けた患者、2回目以降の臓器移植を受ける患者、また、経産婦などが代表例として挙げられます。
これらの患者は、輸血や妊娠などにより既に他人の組織が体内にあることで、その組織に対して抗体が生成されるため、その抗体と相性の良くないドナーの臓器は受け入れてはくれません。
患者とドナーの組織適合性については移植前HLAとPRA検査とはでも詳しく解説しております。
以前は、クロスマッチ検査の結果、陽性反応が示された場合は、そのドナーから臓器提供を受けることを諦めざるを得ませんでしたが、現在では「ドナーの、どのHLAと相性が合わないのか」を、シングル同体検査と呼ばれる特殊な検査で特定し、相性の悪い抗体 (DSA)を患者の体内から血漿交換や遺伝子組み換え薬品等の投与により取り除くことで、安心して移植手術が受けられる環境が整っています。(脱感作療法と呼ばれています)
患者/ドナーともに、腎移植を前提とした十分な事前検査を済ませ、双方ともに移植手術に適応すると判断されたあとで、最後の最後に行われるのが、この「クロスマッチ検査」。
この結果が「陰性」であれば、医師団からゴーサインが出て、数日後には移植手術が施されますから、患者さんにとってこの検査結果は極めて大きな関心事となることでしょう。
●私どもは、日本人患者さまに移植手術を施してくれる海外の医療機関と患者さまを結び付け、臓器移植の「勧誘」や「仲介」、また、「あっせん」といった活動はしておりませんが、過去40年近い極めて豊富な経験に基づき、海外の受け入れ医療機関などの一般情報は引き続き無料でお伝えしておりますので、これから海外にて腎移植をお受けになることをお考えの方々には、過去の経験に基づいた的確なアドバイスを差し上げられると確信しております。
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