移植前HLAとPRA検査とは
国内であれ海外であれ、腎移植などの臓器移植手術に臨む際は、HLAとPRAの検査を事前に済ませておくことは必須です。
以下に、それぞれについて説明いたしますが、「HLA(白血球型)の詳細」も参考になさってください。現時点で判明している全HLAタイプ(型)も掲載しています。
HLAとは
まずHLAとは、ヒト白血球抗原 (Human Leucocyte Antigen) の略で、ひと言で表すと、白血球の型です。
皆さんはご自分の血液型(O, A, B, AB)をご存知とは思いますが、これは赤血球の表面にある抗原(型)により定義されていて、Rh (+ -)を考えなければ、上記の4種類しかありません。
一方、白血球は免疫細胞とも呼ばれる細胞で、ヒトを含めた動物にとって、「自己」か「非自己」かを識別する重要な機能を司っています。
そして白血球の血液型とも言えるのが両親から遺伝したHLAであり、具体的にはHLA-A, HLA-B, HLA-C, HLA-DR, HLA-DQ,
HLA-CWなど多くの座が存在し、これらがそれぞれ数十種類もの型を持っているため (HLA-A9, A24 HLA-B13, B39など)、HLA全体としての組み合わせは、数万から数十万とおりにも及びます。
皆さんは「拒絶反応」という言葉を聞いたことがあると思いますが、移植された臓器が患者の体内になじまず、「異物=非自己」と判断され、仲良くできない状態が拒絶反応です。 それでは体内では、どのようにして「自己」「非自己」を識別しているのでしょう。
それは、数万通りのも及ぶHLAの組み合わせの違いを感知したリンパ球T細胞によって引き起こされるのです。
腐ったものを口にして下痢をする、また、花粉が体内に入ってクシャミをするなど、これらもすべて免疫反応。体内に入った好ましくない異物を排除しようとする免疫反応です。
しかし、HLAの違いによって、移植された大切な臓器が拒絶されては困りますから、ここで免疫抑制剤の登場となるわけです。(非自己を攻撃するリンパ球T細胞の感度を意図的に鈍らせる薬)
近年の免疫抑制剤は従前のものと比べ、ある種選択的に免疫抑制効果を発揮してくれますから、専門医が処方する量の抑制剤を正しく服用し続けることにより、副作用も少なく安心して生活を送ることが可能になりました。
余談ですが、免疫抑制剤を服用せずとも、拒絶反応が起こらない患者とドナーの組み合わせも存在します。それは、一卵性双生児同士の臓器移植。
一卵性双生児ですから、二人のHLAタイプはまったく一致しているため、免疫機構の「敵味方識別レーダー」には、移植された臓器が「非自己」とは写らないというわけです。
しかし一方で、骨髄移植を行う際は、患者とドナーのHLA型が完全に一致しなくてはなりませんから、数十万とおりにも及ぶ組み合わせの中で、HLAが完全に一致するドナーに巡り合うことは簡単ではありません。数十万人のドナー候補者のHLAを調べて、たった一人が適合する計算です。
また、個々人のHLA型は両親から受け継ぐ遺伝子でありますから、親子関係の証明や犯罪捜査などで行われるDNA鑑定とも深く関連している、いわゆる遺伝子情報なのです。
PRAとは
Panel Reactive Antibody (既存抗体)を指した略で、患者の血液に、既知となっている100人分ほどのリンパ球を混ぜて反応を観察する検査で、これにより、その個人がどの程度、他人(ドナーの)臓器を受け入れやすいか(拒絶反応が発現しやすいか、しにくいか)を知ることが出来ます。
過去の臓器移植や輸血、あるいは妊娠などにより、既に非自己の組織が体内にある場合、それに対して抗体が生成されますが、この抗体の値が高いと、移植された腎臓などの臓器が拒絶反応を引き起こしやすいため、何らかのリダクション(脱感作)療法を手術前に施す必要が生じます。
この PRA 検査の結果は CLASS I (HLA-A, B, C座) と CLASS-II (HLA-DR, DQ座) それぞれ % で示され、値が十分に低ければ(おおむね
MFI <1,000〜1,500) でNegative (陰性)判定、陰性と断定できない値に対しては Positive (陽性または擬陽性)と判定され、陰性であれば他人一般の臓器を受け入れやすいことを意味し、陽性であれば、問題となる抗体を除去するか、シングル抗原同定検査を行い、特定のどのHLAに対して患者の抗体が反応するのかを確かめます。
近年では、極めて高感度な測定手法を用いているため、正確にドナー特異性抗体 (DSA) の有無を確認することが可能となりました。
このPRA検査は「患者の体質は(一般的に)どの程度、他人の臓器を受け入れやすいか」を知るために重要な検査であり、他の必要な検査と共に国内の検査機関で済ませておく必要があります。
これらの情報が、再び健康で快適な日常を取り戻そうとしている患者さまの一助となれば幸です。
私どもは2021年以降、日本人患者さまに移植手術を施してくれる海外の医療機関と患者さまを結び付け、臓器移植の勧誘や仲介、また、あっせんや調整といった活動をすることは行っておりませんので、一般情報はお伝えできても、具体的なコーディネーションをすることはしておりませんが、これから海外にて腎移植をお受けになることをお考えの方々には、過去の経験に基づいた的確なアドバイスを差し上げられると確信しております。
当会では海外の医療情報提供のみならず、渡航先での通訳や、現地で調理する和食を中心とした毎日の食事の差し入れ、さらには買い物や衣類の洗濯といった、患者さまが渡航先で安心して快適に過ごせるように、さまざまな役務サービスを提供しておりますので、ご相談やご質問等がおありでしたら、下記までなんなりとお気軽にお問合せください。