最先端の生殖医療について
生まれてくる子の認知ならびに親子関係の創設方法について
何らかの理由で妊娠することが難しく、他の不妊治療で期待した結果が得られなかったご夫婦には、海外の女性のお腹を借りして出産してもらう「代理出産」を検討されている方も少なからずおいでのことでしょう。
この「代理出産ビジネス」は、2030年には現在の10倍の規模にまで膨らむとの試算もあるようです。
日本では認められていない代理出産ですが、世界的に見ると不妊症の広がりや、専門病院の数が増加したことなどにより、生殖の選択肢としての期待が高まってきたことが背景にあるようです。
事実、誰でも名前を聞いたことがある、スペインの超有名プロスポーツ選手、また米国の有名女優や著名な富豪も代理出産により子孫を残したことで、その認知度が高まった結果、米国やフィリピン、またギリシャやウクライナをはじめとする国々が、自国の女性による代理出産によって外国人が子どもを授かる道を合法としていますが、わが国では生命倫理上の問題や、代理出産によって誕生した子どもに対する法的位置づけが未整備などの理由により、法律では禁止されていないものの、産科婦人科学会がこの出産方法に否定的な立場をとっているため、事実上は日本で代理出産によって子孫を得ることは出来ないのが現状です。
しかし前述のとおり、海外においては特に近年、代理出産をビジネスと捉え、医療観光として推進している国が実際に存在します。
これらの国々で代理出産によって子どもを授かるという選択をするメリットとしては、
- ほぼ確実に妊娠・出産を行える能力が証明された代理母によって妊娠・分娩されるので、一般的な不妊治療を重ねるよりも高い確率で子どもが授かれる。配偶者が高齢となり生殖機能が衰えたとしても、実子を得ることが出来る。
- 医療機関によっては、複数の代理母の候補者の中から、年齢・血液型・出産歴・容姿などの情報により、依頼者が代理母となる女性を選ぶことが出来る。
- 代理母は卵子の提供はせず、依頼するご夫婦の精子と卵子を用いて、体外受精した凍結受精卵による妊娠を担うだけのため、生まれてくる子どもは、遺伝学的にも生物学的にも、依頼者であるご夫婦の子供となる。
- 効果が明確に読めない不妊治療を繰り返すには、その費用の総額が未知であるものの、代理出産による費用は、その正確な総額が事前にほぼ判明する。
- 国によっては、万一代理母による分娩が成功しなかった場合でも、子を授かるまで、追加料金の支払いなしに出産を「保証」するプランを販売している医療機関も存在します。
以上のようなメリットがある反面、デメリットとしては以下の事柄が挙げられるでしょう。
現在の日本の民法では、「分娩した女性が戸籍上の母親となる」と定められているため、代理出産の依頼者であるご夫婦は、このままでは戸籍上の父母になることが出来ません。
つまり、依頼者であるご夫婦の精子と卵子から生まれる子どもであっても、法律上はお腹を貸した代理母が戸籍上の母親となってしまうのです。
この不都合を解消するため、ご夫婦の凍結受精卵によって代理母が妊娠したことを確認後(必ず出生前に)、ご夫婦の夫が「胎児認知」を行うことで、法律上の父子関係を創設することができ、代理母が外国籍であったとしても、生まれてくる子どもは日本国籍を取得することができます。(日本人の父の子)
ただし子の出生後3か月以内に、当該国の大使館に代理母から出生届を提出することが求められますので、もしも3か月を経過してしまうと、子は出生時にさかのぼって日本国籍を喪失しますから、十分な注意が必要です。
以上の「胎児認知」手続きを踏むことで、父(ご主人)と子の親子関係は成立し、子は「実子」として戸籍に記載されます。しかし、これだけでは母(奥様)と子の親子関係は成立しません。
奥様と子の親子関係を成立させて、奥様の実子として戸籍に反映させるには、日本人のご夫婦と、代理出産により誕生した子との間で「特別養子縁組」を組む必要があります。
この特別養子縁組により、奥様は晴れて子の実母として母子関係を創設することができ、同時に代理母の名前は戸籍から抹消されます。ただし、この手続きも養子縁組の日から3か月以内に完了することを忘れないでください。
なお、以上の手続きは、各国の民法(家族法)によっても手続きや方法が変わってくるため、代理母の属する国の法的知識が必要になってきますので、信頼できる国際弁護士の助言を得ることは必須と言えるでしょう。
さらに子の出生後には親子で日本に帰国しますが、帰国には子のパスポートが必要です。
そのためには、子の戸籍謄本を取得した上で、日本国内での申請手続きが必要となりますから、国内での出生とは違った少し複雑な手続きが必要となってきます。
また、外国人夫婦の依頼により、自国の女性が代理出産を行うことが合法化されている国であっても、医療現場では日本の医療文化や常識が通用しないことが多々ありますから、法律面で弁護士に依頼すること同様、翻訳・通訳は豊富な経験を誇る私どもの医療通訳サービスを是非お役立てください。
子宮移植について
子宮移植は比較的新しい臓器移植治療です。子宮が「臓器」であるかという点について、明確な定義は見当たりませんが、厚生労働省が定めるところによると、臓器とは定義されていないようです。
この子宮移植は文字どおり、子宮なしで生まれた女性や、病気やけがで子宮を失った(子宮因子不妊症の女性)に、妊娠・出産の機会を与える有効な医療であり現在、カナダ、米国、ブラジル、中国、トルコ、ドイツ、フランスなど2020年現在、我が国を含め24カ国で実施または準備段階にあり、移植医療が受けられる国は今後も増加するものと思われます。
子宮移植が他の臓器移植と異なる点としては、患者は移植された子宮を用いて妊娠・出産した後は、その移植された子宮を摘出するため、以後は免疫抑制剤を服用する必要がなくなるという点にあるのではないでしょうか。
通常の臓器移植を受けた患者は、他人の臓器が体内に移植されたことに伴う免疫反応(拒絶反応)を抑制するため、タクロリムス等の免疫抑制剤を一生涯にわたって服用する必要がありますが、子宮移植においては、移植された子宮を分娩後に摘出することにより、免疫抑制剤の服用が不要になるということです。
しかし、ご夫婦の受精卵を用いて妊娠課程に進むには、子宮が移植されてからおよそ2年間は経過観察をする必要がるため、移植後すぐに妊娠・出産とはならないようです。
様々な事情により自然に妊娠・出産をすることが出来ないご夫婦にとっては、代理出産と併せて海外で子宮移植を受ける道も選択肢として考慮してみてはいかがでしょうか。
この子宮移植に限らず、海外の医療機関からより詳しい正確な情報を得るために、私どもの医療通訳サービスを是非お役立てください。
子宮移植に限らず、当会はすべての医療行為の内容や治療計画、また、費用についてはいっさい関与いたしません。
治療内容・渡航スケジュール・費用など医療行為に関する契約は、患者様と当該医療機関の間で取り決めていただき、当会は患者様の海外滞在中の通訳と身の回りのケアを含む役務サービスのみを提供いたします。